「京都デジタルアーカイブ推進機構」なるものが発足した。京都市と京都商工会議所が主体になり、印刷業者にも広く参加を呼びかけるというものだから、「なにかいいことがあるかもしれない」という期待ででかけていった。
それにしても「デジタルアーカイブ」とはなんだろう。前半のデジタルからは、コンピュータを駆使した電子エレクトロニクス関連の事業だろうということは想像がつく。アーカイブの方はというと、やや馴染みがない。英和辞書を繰ってみると、「記録保管」「古文書」といった意味だ。なるほどやっと京都らしくなってきた。具体的には、西陣織・友禅染などの伝統産業の意匠をデジタル技術で蓄積、つまり「記録保管」しようということらしい。今まで、見本帳などに貼り付けられて、個別の会社なり個人なりが所持してきた意匠の類をコンピュータの中にいれてしまおうというのだ。
そこまでなら「そうですか。結構なことですな」で済む。今まで文化財を記録するのに写真が使われてきたのが、たとえばデジタルカメラにかわってコンピュータに蓄えられたというだけのことだ。ところが、今回のこの推進機構ではそうしたデジタルアーカイブを「蓄積」するだけでなく「活用」をめざしているらしい。京都の誇るさまざまな意匠をコンピュータに蓄えるだけでなく、全世界に向けて発信し、他の産業で利用できないかを探ろうというのである。だからこそ、我々産業界にもおよびがかかったものらしい。
では、どうやって、「活用」するのか。それはすぐに儲けにつながるのか。参加者一同、固唾をのんで推進機構側の説明を見守った。発せられた言葉は「それを考えるのは参加するみなさんです」だった。案の定、一般参加者の反応は厳しかった。「何をしてもらえるのかわからない会に会費をだせない」「もっと具体的なことを決めてから、人を集めるべきだ」云々。
それに対し、京都市の情報化推進室長清水宏一氏の答えは明白だった。
「デジタルの世界の動きはとにかく進歩が速い。じっくり考えている暇などないのです。とにかくなにかをはじめなければ京都そのものが沈没してしまう。役所はきっかけを与える。あとは民間のみなさんが知恵を結集して、次世代の産業を育てて欲しい」
私は、思わず拍手していた。京都の産業が地盤沈下をはじめて以来、われわれ産業人ですら、「なにをしてもらえるのか」ということをいいすぎてきた。しかし日本は資本主義国家なのだから、自分の頭で考え、「なにかをする」ことこそが必要なのだ。おそらくデジタル世界は、今「なにかができる」場所だろう。そのために支援をしてくれるというのなら、ありがたくうけて、「活用」させてもらおう。デジタルアーカイブ、さて何ができるだろうか。
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