『現代のことば』

鴨川の野鳥 99.3.30

 鴨川を埋め尽くすようにいたユリカモメもそろそろ北への旅立ちの季節を迎えて、日に日にその数を減らしている。鴨川にはユリカモメだけでなく多くの鳥がいる。野鳥に興味のある人なら当たり前のことなのかもしれないが、私がそのことを意識し出したのは三年ほど前からだ。鴨川を散歩中に三才だった息子に鳥の名をきかれて、市販の図鑑を手に調べだして以来のことだ。

 鴨川の名からも当然なのだが、鴨類は豊富で、カルガモ、マガモは言うに及ばず、オナガガモ、ヒドリガモ、ハシビロガモ、キンクロハジロなどを見つけた。サギ類もコサギ、ダイサギ、アオサギなどがいる。目が慣れてくると、セキレイやモズなどの小鳥も発見でき、一番驚いたのは、上賀茂神社のすぐそばでカワセミを見かけたことだ。

 やはり、この鳥の多さを素直に喜びたいと思うとともに、京都人として、この街中での豊かな自然をいささか自慢したくもなる。特筆しておきたいのは、この自然は取り戻したものだということだ。子供の頃、鴨川が家のそばだったこともあり、学校の休みなどには庭のようにして遊んでいたが、あまり鳥はいなかったように思う。すくなくとも、冬にユリカモメなど来ていた記憶はない。たしかに魚はいたし、アメリカザリガニもよくみかけたが、今から考えると、下水のような変なにおいがしていた。川底にはよくゴミがおちて、藻と一緒に揺れていた。そういえば、河原で染織もおこなわれていて、いろとりどりの染料が流れていくことさえあったように思う。記憶が曖昧だが、決して、清流というイメージではなかった。

 学生の頃、はじめてイギリスへいって、街の真ん中の公園から大きな鴨類が群をなして飛びだつのをみて、うらやましく思ったのを憶えている。やはり、大都会と自然の共生が可能な街であってこそ、一流の国なのだと感心したものだ。しかし、あとで聞いてみると、ロンドンもやはり自然を取り戻した街なのである。実はその二〇年前にはスモッグで数千人が死んだこともあるのだ。

 私が中学生の頃、初めて公害という言葉を知った。それから、営々公害問題に国をあげて取り組んだ結果、今、自然が戻ってきた。努力すれば必ずむくいられる。確かにまだ満足いくようなものでないかもしれない。しかし、今は、鴨川のカワセミを喜ぼう。そして、三〇年間の行政にこの面では感謝しよう。

 うちの子供はその後生まれた次男も含めて、すっかり鳥が好きになった。鴨の名前もたくさん憶えた。私の子供時代と同じく、そろそろ鴨川を遊び場にしつつある。もうすこし暖かくなったら、またパパと鴨川に遊びに行こう。もうパパが遊んでもらえないかもしれないけれど。

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